Potage Saint-Germain, Velouté de petits pois
グリンピースについて
いつも脇役だった
グリンピースと言えば、【ふらかつ】が子供の頃は缶詰がメインで、それがどうも苦手、という声しか聞いたことがありませんでした。あの独特の食感、苦さ、缶詰の汁の味や匂い。ご多分に漏れず、私も嫌いでした。一度気になりだすと、カレーやオムライス、肉じゃが、カツ丼など、あちこちにちょこちょこ乗っているのです。給食の中にその姿を見つけようものなら、私の中のグリンピースを食べたくないロボットが起動して、お箸で一粒一粒、器用に避けるわけです。
今でこそ、料理する側になってわかったのは、彩りを添えるには、一年中手に入る缶詰の緑色がとても重宝する存在だということ。それでも、食べる側の子供たちにとって、当時はこの苦いグリンピース、苦いピーマン、苦い人参と並んで、三大苦手野菜でした。ただ、今時の野菜は、どれもびっくりするほど甘みがあっておいしく、グリーンピースも例外ではありません。ですから、令和の子供たちがグリーンピースに対して抱いているイメージは、昭和の「苦い、匂いが嫌」とはもう違うかもしれませんが。
いずれにしても”常に脇役の野菜” であることには変わりないかなと【ふらかつ】は思っています。
フランスで知った、主役級の美味しさ
【ふらかつ】は、20代前半にフランスで初めて、生のグリンピースを食べてその美味しさに驚きました。さやから剥いたばかりのグリンピースの持ち味が上手に引き出された料理を味わって、そのイメージがひっくり返りました!それがシンプルの極み、「グリンピースのフランス風((petit pois à la française)」だったのです。
さやから取り出したグリンピースを、小玉ねぎ、角切りのベーコンとほんの少しの無塩バターで煮て、鶏肉のクリームなど料理の付け合わせでいただく、フランス家庭料理の定番中の定番です。それはそれは衝撃でした。「グリンピースってこんなに美味しかったんだ!」って。今では「グリンピースごはん」は大好物のひとつ。これを炊かずして、初夏を迎えることはできません。
【ふらかつ】は今日、そのきっかけをくれた生のグリンピースが主役のフランス家庭料理をご紹介したいと思っています。
光輝く、緑色のダイヤモンド
フランス語でグリンピースは「petit pois(プチ・ポワ)」、直訳すると「小さな豆」。春の訪れを告げる食材の一つとしてフランス人に愛されています。すがすがしい青色、爽やかな香り・・・。新緑の季節から初夏にかけてマルシェに登場する大人気の季節の食材です。
17世紀後半のフランス。「太陽王」と称えられたルイ14世は、グリンピースを愛してやまなかったそう。彼が好んで食べたことで、フランス宮廷でちょっとしたグリンピース・ブームが起こったと言われています。当時は高級野菜として珍重され、食材というより “春を味わう贅沢” といった存在でした。その名残か、今でもフランスでは新鮮なグリンピースは少し高めの価格で売られていると聞いたことがあります。
家庭菜園
一方で、栽培も難しくないため、フランスでは家庭菜園のスタメンです。種まきのタイミングは10月下旬から11月初旬で、真冬は凍る土の下でじっと芽をあたため、寒さから解き放たれると、グングン蔓をのばしてギッシリ実をつけます。
このグリーンピースは、「エンドウマメ」の未熟な若い実を摘み取ったもの。「エンドウマメ」とは、マメ科エンドウ属の一・二年草で、食用に広く栽培されている植物です。サヤエンドウ(絹さや)やグリーンピース(実エンドウ)、スナップエンドウなど、成長段階や食べ方によって様々な呼び方があります。
グリンピースでポタージュをつくる
旬の今だから、さや付きの状態で買う
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
日本でも旬は同じく4月から6月頃です。八百屋の店先でグリンピースのさやを手に取ってみてください。指先で弾けるように剥くと、ふわりと立ちのぼるのは、青くささではなく、むしろ甘くて瑞々しい香り。今こそ、フレッシュなさや付きのグリンピースを買ってきてフランス家庭料理に挑戦してみませんか。
ワインを飲む日に作りたい、おしゃれな緑色のポタージュ。その名も「Potage Saint-Germain(ポタージュ・サンジェルマン)」。
このグリンピースのサンジェルマン風ポタージュは、イル・ド・フランスの郷土料理です。その中のコミューン、サンジェルマン・アン・レがグリンピースの産地だったことからこう呼ばれるようになりました。ルイ14世が生まれた城を中心に発展した、見どころがたくさんある楽しい郊外の町。【ふらかつ】もいつか行ってみたいです。
サンジェルマン風ポタージュの材料と作り方
材料(3〜4人分):
■ グリンピース さやを取り除いて賞味250g
(もちろん、冷凍品でもOK。冷凍のまま使います。)
■ 新玉ねぎ 1個
■ フレッシュ・ミント 2〜3枝
■ 飾り用のフレッシュハーブ(パセリやチャービル)
■ 無塩バター
■ 塩・こしょう
■ (お好みで)生クリーム 大さじ2〜3
※ミキサーまたはハンディフードプロセッサーを使います(なければ、大きなすり鉢でも代用してみてください)
作り方:
①玉ねぎの繊維を断ち切るように薄切りにする。
②フライパンにバターを中火で熱し、2/3量が溶けて泡立ってきたら火を弱め、玉ねぎを加えて炒める。
色が付かないように注意。
③グリンピース(冷凍品は冷凍のまま)、水を入れて強火にする。
フレッシュ・ミントを加え、タイマーを5分セットする。
④約5分、グリーンピースに火が通るまで煮ます。せっかくの鮮やかな緑色が落ちてしまうので煮すぎないように注意。
沸騰してきたら素早く仕上げていきます。塩・こしょうをして火を止める。
⑤ミントを取り出し、熱いうちに煮汁ごとミキサーで撹拌する。
⑥鍋に戻して火にかけ、塩、胡椒で味をととのえて完成。
素材の美学
塩が甘味を最大限に引き出してくれるからこそ、最小限の味つけで十分に美味しい。まさにフランスのエスプリが詰まったひと皿。こういう食べ方に出会うと、「素材と向き合う」ってこういうことなんだなあ、としみじみ感じます。足し算と言われるフランス料理ですが、家庭で食べられている料理には、素材の持ち味を活かすこと、季節感を大切にすること、そして美しさを追求する盛り付けなど、日本料理との共通点が多いです。
盛り付けと今日のワイン
ポタージュを器に盛り、お好みで生クリームを少量回しかけて、刻んだハーブを散らします。
週末の家フレンチに、ワインと前菜として一緒にどうぞ。正式なフランス料理のコースでは、オードブル(作品の外という意味)=前菜に続いてスープ類が出され、メインが提供されます。つまり、このスープからがコース本番ということになりますが、家庭では、スープ(ポタージュ)が前菜ということも多いです。
これに合わせるのは、前出のティエリー・ピュズラが造る別の白ワイン。ロワールを代表するル・クロ・デュ・テュ=ブッフのヴァン・ヌーヴォー 2024。ソーヴィニョン・ブラン主体で、年によってはシャルドネがほんの少しブレンドされています。ハーブの爽快感、みずみずしい味わいがこのポタージュにぴったりです。私は27年前、この人のワインを飲んでソーヴィニョン・ブランの概念が覆され、自然派ワインの世界に入ったと言っても過言ではありません。
まとめ
次のワインの食卓に、初夏を迎えるこの一皿を添えてみませんか?
脇役に回りがちなグリンピースも、フランス人の手にかかればこんな “主役級” になるんです。
シンプルなのに、味わい深い。子供の頃にインプットされたグリンピースのイメージが180度アップデートされること請け合いです。
さやを剥く時間、湯気の向こうに立ちのぼる香り、新緑を思わせる鮮やかな緑、ほくほくとした口当たり。【ふらかつ】にとって、どれもグリンピースが運んできてくれるこの時期だけの小さな小さな幸せです。


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