ゴールデンウイークが終わると毎年よく耳にするのが「5月病」というワードです。
”学校に行きたくない!”と言って親が頭をかかえる……。
という子供がかかるようなイメージが強いかもしれませんが、
年齢は関係なく症状が現れることがあります。
「バーンアウト症候群」というワードを聞いたことがあるでしょうか?
バーンアウトは、バーンアウト・シンドロームの略語であり、1974年に精神心理学者ハーバート・フロイデンバーガーが用いた造語です。日本では、燃え尽き症候群といわれています。高い意欲で仕事や物事に取り込んでいた人が、心身の疲労の蓄積により燃え尽きたように意欲を失い、社会に適応できなくなる症状です。
突然おそってきた「バーンアウト症候群」
私自身、趣味はたくさんあるし、
たいていのことは美味しいお酒を飲んで寝たら翌日にはスッキリ!
という感じだったので、まさか自分の身に起こるとは思っていませんでした。
仕事のいきずまりによる長期に渡るストレスを感じてはいましたが、
そこに子どもの不登校と引きこもりという難題が加わりました。
「本当にこの選択でいいのか?もっと別の最善策があるのでは?」
とタイムリミットが迫る中で、その問題を自分1人で対処して抱え込みながら、
子どもの今後を左右する大事な決断をしなければいけないと、
必要以上にプレッシャーを感じていました。
そしてまた1つ、まったく解決法が見いだせない難題がプラスされ、
自分でも気づかないうちに相当なストレスを蓄積させていたようです。
今まで好きでやっていた趣味もまったく気持ちがのらない。
ご飯を作ってもいまいち味がわからなくて美味しく感じない。
気分のup & downは激しくなっていきました。
今思うと徐々に兆候が出ていたのだと思いますが、周りにはなかなか言えず、
がんばってなるべく普段と変わらない自分でいようとし続けたために
最終的には朝、布団から起き上がれない状態になっていました。
そんな状態でも体を引きずるようにして職場に行き、
仕事や他のことをこなそうとしていたので
限界がきてバーンアウトが起きてしまったのだと思います。
休むことの勇気や、もっと周りに助けを求めることも必要だったのに……。
自分をギリギリまで追い込んでやり遂げようとする性格が災いしたようです( ;∀;)
何事も過ぎるというのはダメですね……💦
2人子供がいますが、1人が2年くらい前にバーンアウト状態に陥り、いまだ苦しんでいます。
突然「完治することはない」と難病であることを宣告され、
3年間必死にがんばって目指してきた進路を絶たれてしまったのが原因のようです。
それでもなんとか別の道を見つけてがんばりだしたところを、
また主治医にバッサリとダメ出しされたりして、
なかなかトンネルから抜け出ることができません。
だんだん部屋から出てこなくなり、食も細くなってきて心配になりますが、
自分も経験しているのでわかるのですが、
変わってあげることはできない……。ただ力になってあげることはできるので、
復帰できるまで根気強くサポートし続けたいと思います。
気持ちに寄り添ってサポートしていくうえで、
「何が身に起きているのか」ということをきちんと理解しておこうと思い、
いろいろ調べたことを載せてみました。
同じように苦しんでいる方がいたら何かのお役にたてたら幸いです。
MBIによる症状の測定
バーンアウトはMaslach Burnout Inventory(MBI) によって、情緒的消耗感・脱人格化・個人的達成感の低下の3つの症状から定義されています。
それぞれの症状に当てはまるかどうかは、「日本版バーンアウト尺度」によってチェック可能です。
情緒的消耗感 | ・こんな仕事、もうやめたいと思うことがある。 ・1日の仕事が終わると 「やっと終わった」 と感じることがある。 ・出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うことがある。 ・仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある。 ・体も気持ちも疲れはてたと思うことがある。 |
脱人格化 | ・こまごまと気くばりすることが面倒に感じることがある。 ・同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある。 ・自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある。 ・同僚や患者と、何も話したくなくなることがある。 ・仕事の結果はどうでもよいと思うことがある。 ・今の仕事は、私にとってあまり意味がないと思うことがある。 |
個人的達成感 | ・我を忘れるほど仕事に熱中することがある。 ・この仕事は私の性分に合っていると思うことがある。 ・仕事を終えて、今日は気持ちのよい日だったと思うことがある。 ・今の仕事に、心から喜びを感じることがある。 ・仕事が楽しくて、知らないうちに時間がすぎることがある。 ・我ながら、仕事をうまくやり終えたと思うことがある。 |
上記の項目に複数あてはまる場合、バーンアウトの可能性が極めて高いといえるでしょう。
バーンアウトの兆候
バーンアウトは、深刻化する前に兆候が現れます。具体的には次のような症状です。
● 塞ぎがちになる
● めまい
● うつ状態
● 偏頭痛
● 自律神経の乱れ
● 思考停止
季節の変わり目にも同様の症状が起こりやすいため、兆候が見られる人の活動状況などを鑑みるなど、見極めには注意が必要です。
バーンアウトにみられる3つの症状
バーンアウトにみられる症状は3つに大別できます。ここでは、それぞれの症状について解説します。
情緒的消耗感
MBIマニュアルでは、情緒的消耗感を「仕事を通じて、情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態」 と定義しています。情緒的消耗は、バーンアウトの主な原因とされています。どのような仕事であっても、信頼関係を築くためには、情緒的エネルギーが必要です。
管理職やサービス業では、人との接触が多いため、なおのこと情緒的エネルギーを消耗しやすい環境にいます。結果的に疲労やストレスが蓄積してバーンアウトになりやすい状態となります。
脱人格化
脱人格化は、MBIマニュアルによると「クライエントに対する無情で、非人間的な対応」と定義されています。クライエントとは、臨床心理学で使われる依頼人やサービスを受ける人の総称です。人格を無視したような思いやりのない言動がみられ、クライエントの名前を呼ばずに番号などを使うようになります。
また、クライエントが理解できない専門用語で話したり、接触を避けようとしたりすることも脱人格化の兆候です。これは自分に残っている情緒的エネルギーを減らさないようにする防衛反応だと考えられています。
個人的達成感の低下
個人的達成感とは 「職務に関わる有能感、達成感」 と定義されています。バーンアウトにより、これまで高いレベルで行っていた仕事や物事ができなくなるため、明白に質の低下が分かるようになるでしょう。
成果が急激に落ち込むため、能力が低下したと認識する場合もあります。高いレベルで成果を出し続けてきた人が、低いレベルでしか結果を出せないとなると、個人的達成感が低下することもやむをえません。達成感の低下は、強い自己否定の行動となる場合が多いため、離職する可能性も高くなります。
※ 出典:労働政策研究・研修機構 バーンアウト (燃え尽き症候群)
バーンアウトになりやすい人
バーンアウトは、仕事と真剣に向き合ったり、仲間や会社のために頑張り続けたりする仕事熱心な人ほど、バーンアウトになりやすい傾向があります。職務上の役割とプライベートを分けられない人も情緒的エネルギーを消耗しやすいでしょう。若年層や仕事の経験が浅い人は、仕事への理想と現実のギャップによりバーンアウトに陥りやすくなることも少なくありません。
バーンアウトの主な要因
バーンアウトの主な要因は、個人要因と環境要因に分けられます。ここでは、それぞれの要因について解説します。
個人要因
完璧主義やひたむきさは、バーンアウトになりやすい人の特徴です。仕事でパーフェクトな結果やプロセスを求めることは、心身に相当なストレスを蓄積します。結果が出るまで、ひたむきに努力することも同様です。
性別では、男性よりも女性の方が情緒的エネルギーを消耗しやすいとされています。ストレスの対処方法として、コーピング(ストレス回避)があげられます。コーピングには、問題への対処を目的とするものもあれば、問題から離れ発散させるものもあります。しかし、コーピングにより問題を後回しにしたり、現実逃避したりするとそれがかえってバーンアウトを促す結果にもなるため注意が必要です。
環境要因
過重労働や重いノルマなどの大きな負担は、ストレスを増大させるため、バーンアウトの要因となります。具体的には、人手不足により、長時間労働を強いられる環境である看護師や保育士などです。ノルマが厳しく、未達成に対するペナルティが厳しい営業や販売職などもあげられます。
ヒューマンサービスは、医療や介護で人と接するため、情緒的エネルギーを消耗しやすい環境です。さらに、患者や利用者の人生や生活に直結することも大きな負担となります。
燃え尽き症候群になりにくい考え方
自分の感情、およびそれと密接に結びついている思考などとの向き合い方について、近年注目されている方法の1つに、「心理的柔軟性」という概念があります。
心理的柔軟性とは、“勝手に湧き上がる自分の感情や思考にとらわれることなく、自分自身が大切にしたい考えをより採用し、いきいきとした生活を送るための行動的側面”のことをいいます。
最近の研究によると、心理的に柔軟な従業員は、燃え尽き症候群の1症状である「情緒的消耗」、すなわち心身のエネルギーを消耗し、感情をすり減らすような経験が少ないことに加え、本来は仕事のつらさにより情緒的消耗が強まるところ、それがやわらぐことが分かっています。
一方で、表層演技を行うことの多い従業員は、仕事のつらさによって情緒的消耗が進んでしまうことも明らかになりました1)。この研究結果から、心理的柔軟性が優れた人は、たとえ職場環境がよくなくても燃え尽き症候群になりにくい思考パターンを持っている可能性があるといえます。
心理的柔軟性を身につけるには「苦痛」と「苦悩」の違いを知ろう
「苦痛」とは、からだや心に感じる苦しみや痛みの最初の接触時の姿です。一方、「苦悩」は苦痛についてあれこれ苦しみ悩むことが広がっていくプロセス全体を指しています。
苦悩の広がりの範囲や速度は個人差がありますが、広がるときは瞬時に広がります。この苦悩のプロセスに知らず知らずのうちに巻き込まれていることこそが、つらさの原因なのです。
苦悩への具体的な対処法
心理的柔軟性を身につけるためには、メンタルヘルスの分野でよく使われる認知行動療法の一種である、「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)」という方法があります。
お手軽な方法は、苦悩の内容を「 」で囲んでセリフにし、「と、考えた」という語句を付け加えるやり方です。
「本当は笑顔な気持ちじゃないのに…」と、考えたというセリフにするのです。
こうした対処法をするだけで、苦悩が広がるプロセスと距離を取ることができ、巻き込まれにくくなります。
参考記事