『流浪の月』感想

くらし

『流浪の月』(るろうのつき)は、凪良ゆうによる小説で、2020年本屋大賞を受賞した作品です。2022年には広瀬すず・松坂桃李主演で映画化もされました。

凪良ゆうさんの作品は「汝、星のごとく」を読んでおり、今回二冊目です。

本屋大賞受賞【第168回直木賞候補作】【第44回吉川英治文学新人賞候補作】のベストセラー「汝、星のごとく」が本当に素晴らしく、久しぶりにほかの小説も読みたい!と思う作家さんが見つかったので、期待大でした。


【あらすじ】

10歳の少女・更紗 (さらさ)は、引き取られた伯母の家に帰ることをためらい、雨の公園で孤独に時間を持て余していた。そこに現れた孤独な大学生の文 (ふみ)は、少女の事情を察して彼女を自宅に招き入れる。文の家でようやく心安らかな時を過ごし、初めて自分の居場所を手にした喜びを実感する更紗。しかし2ヵ月後、文が誘拐犯として逮捕され、2人の束の間の幸せは終わりを告げる。

15年後、恋人と同棲生活を送っていた更紗は、カフェを営む文と偶然の再会を果たし、過去の「事件」に向き合いながら、それぞれの人生と向き合っていく物語です。


【感想】

「事実」と「真実」は違う

これがこの本の主題で、そのことについてすごく考えさせられました。

確かに15年前の事件の概要をニュースなどで知ったら、こんな真実があったという考えにも至らないと思います。

真実が捻じ曲げられていることってたくさんあるのでしょう。
本当のことは当事者にしかわからない。

ネット社会の怖さ。

被害者と加害者。
毒親、負の連鎖。

本当の犯罪者は誰か。
偽善、正義とは。

愛というものさえ超越した、名前のつけようのない2人だけの唯一無二の関係性…

この2人の状況、境遇、環境、過去も現在もどう考えても
うらやましいという要素はありませんが
私にはこの2人が再開できたこと、唯一無二の関係、愛さえも超越した、名前のつけようもない何かが、羨ましくてまぶしくてたまりませんでした。

この2人でしか癒せない何か…

こんな我慢や制限のある、今後も一生続く環境の中で、2人が肚を決めてつかんだ自由。

自由なんてほかの人に比べたら無いに等しいのに、それでも人生を生きていくことをあきらめない。

今後起きるであろうことも、想定して過度の期待をせず、いい意味で諦め、流れに逆らわず、
でも掌にある自由を、幸せを決して手放さないで生きていくと決めたこと。

まぶしくてかっこいい。

ほかの登場人物も幼少期の傷を抱えていますが、2人は負の連鎖を断ち切り
責任をもって自分の人生を生きると決める。

優しさと強さ。

2人が梨花に出会えてよかった。
梨花も2人に出会えてよかった。

他人に理解されなくてもお互いがわかっていればいい、
けどその関係を理解して受け入れてくれる人が1人でもいる。

幸せって誰かから決められるものではなく、自分で決めるもの。

自分の状況は違うけれど、これから生きていく中でこの2人のことを、
思い出して生きていきたいと思えました。

この2人と梨花がただただ幸せに生きていってほしい、と願わずにはいられない物語でした。

凪良さんの世界って、なんとなく薄暗く湿っていて静かで静謐で、でもほの明るい何かがあるみたいな感じだと、2冊読んで感じました。

痛みや孤独、生きづらさ、絶望の中のほのかな希望、自由、幸せ、人に理解されなくても当事者だけにわかる世界。

この世界は辛くて苦しいけど、生きていく価値のある何かは見つけられるんだよ…
と言っているような。

なんでこんなすごい物語がかけるんだろう…どんな経験をされてきたのだろうと思ったら
凪良さん自身、母子家庭で育ち、お母さんが出奔し児童養護施設で育ち、15歳から自立、
「中卒」「施設出身」と足元を見られたり、お母さんと連絡とれるようになってからは仕送り…

「はたから見たら過酷な人生ですが、絶望一色にならなかったのは、物語のお陰です。」
とインタビューで答えてます。

そういう経験があって痛みがあってそれを消化したからこそ、リアルでこれだけ心ゆさぶる物語がかけるのだとわかりました。
私も物語の世界にたくさん救われてきたから共感です。

小説ってただ読んで、あー面白かった!って思って何も残らないものもあるけど
凪良さんの本は生きるって、幸せって何だろう、社会やいろんなことを考えさせてくれます。

心の奥底に波紋をおこしてくれるような本です。

何年か後に再読したいと思います。

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